? GNHの応用 - GNHと戦後の平和復興 その3 -


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GNHと戦後の平和復興 その3

「民族対立の原因」

 その状況下、内戦が終わった国に対して我々はどのように新しい社会つくりを提案していけばよいのであろう。内戦の発生形態にも因るが、それらに一般論を当てはめることは無理がある行為のように思える。

 民族対立は、周辺国や国際情勢の変化、国内の民族バランス(人口、経済力等)の変動、政権交代などに起因する場合が多い。そしてそれぞれ行動を起こす民族には「大義名分」が掲げられ、内戦へと向かっていく。
 その大義名分は後天的な要素が大きい。旧植民地支配国らによって、民族の人口分布や歴史的居住範囲を無視して勝手に線引きされた現在の国境線がひとつの大きな対立の原因となっている。
 例えばイラン北部やトルコ南部を主な居住地としているクルド民族は民族の意思とは無関係に国境線によって分断されて、それぞれの国で「少数民族」としての立場に甘んじている。人口60万人強で一国の体をなしているブータンの国民よりはるかにその総人口は多い。

 また以前植民地支配をしていた西洋列強が得意としていた手法の一つで、「支配する地域の一部族に特別な地位を与え、他部族を支配させる」方法は、以前は効率的に機能していた。直接西洋列強は自ら直接手を下すこともなく、自分たちに言いなりの政府を作り出していく。この結果、植民地の民族間に支配する立場と支配される立場の民族が生み出されたのである。
 この関係は旧宗主国の影響が大きい場合は、旧植民地時代の民族間の力関係が安定しているであろう。しかし、一旦その影響力が弱まると「旧宗主国によって作り出された支配階級」と「今まで支配、搾取されていた民族」との間に不協和音が起こるのは当然であろう。

 このように国際情勢や政権交代は他国の影響を大きく受ける為、目に見えない形での内政干渉は今でも内戦の主要な原因である。政党に対する献金による政治的な他国や特定の団体からの圧力、宗教イデオロギーに関わる勢力、分断された民族同士の共闘などなど様々な形で、独立国は他国の影響を受ける。
 かといってアフガンやイラクで行われた「他国による独立国に対する直接武力介入」は許されてはならない行為である。例えば「チベット民族の解放」の為にアメリカが中国に軍隊を送ることも、イラク介入を全世界が認めるのならば(強者の論理が国際法だと証する輩が先進国の人間の大多数だとすれが)可能な行為である。
 このように民族対立を利用しようとしている国家があることも事実である。

 

文責 平山修一

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