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都会に【田舎】を作る

2015年06月14日

都会に【田舎】を作る

 豊かな自然とのふれあい、人情あふれる親切な人々、穏やかに流れる時間。多くの人がそういったイメージを【田舎暮らし】に重ねているのではないか。しかし実際は【田舎】の現状はユートピアではない。
 定年後は自然に囲まれて農作業をして暮らしたい、こうした人なら地方志向があっても田舎暮らしは可能であろう。しかし以前住んでいた地元に戻るならまだしも、新天地にIターン移住をしても成功する確率は低いのではなかろうか。
 その理由として考えられるのは、1.新たな人間関係を作るのが難しい、2.都会の利便性が無い、3.経済収支の想定(田舎ならではの付き合いにかかる経費や生活にかかる諸経費)が甘い、などがあげられる。
 【Uターンする】のであればこうした心配は軽減されるが、Uターン先のコミュニティが【都会帰り】の人を受け入れるような土地柄ではない場合は難しいであろう。Uターンする年齢が高ければ高いほど、【田舎】への適応は難しく孤立してしまうのではないか。
 【田舎】ではそこでだけ通じる常識や言葉が、その住民にとっては心地よい空間を作りだす。しかしその裏返しとして、そこは価値観が共有できない人たちにとっては居心地の悪い排他的な空間となる危険性があるのである。
 ならば発想を変えて田舎に移住するのではなく、住んでいる場所に【田舎】の良さを導入してみては如何だろうか。
 徒歩圏内で生活の大半が賄え、適度な自然との触れ合いも出来る。また徒歩圏が安全であり、歩道では少し腰かけ、座って話が出来るスペースがある。そして高齢者から若い世代まで、人と人が交流できる場所ときっかけが溢れている。
 こういった視点やイメージ、価値観を持って今の生活や生活インフラを見直すことが大事なのではないか。商店街の空き店舗は考えようによってはマルチな交流の場になる可能性を秘めている。こうした思考の転換が私たちの生活を考える際にも必要である。
 生活は一人でするものではない。人は家族や社会との関係性の中で生きている。人と人とのネットワークがあってこそ【生活の場】であり、そこで暮らせるのである。その関係性を物理的な制約の中でどう具現化するのか、これを話し合う事もひとつの繋がるきっかけであろう。
 田舎より都会の方が生活の利便性は高い。今までの都会の生活に田舎の良さのエッセンスを導入する。考えただけでも楽しいではないか。今こそ(私を含めた)田舎出身者の出番ではなかろうか。

文責 平山 修一

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