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GNHは何結び?

2013年07月01日

GNHは何結び?

 「もやいなおし」という言葉を初めて教えていただいた時、「いい言葉だな」と思いました。この「もやいなおし」は、「ばらばらになってしまった心のきずなをもう一度つなぎあわせる」という意味で、水俣地域再生の合言葉のように使われている造語です。元々「もやう」とは船と船をつなぎ合わせることを意味します。意外であったのは、造語であるということ。あたかもこの地域では古くから使われてきた言葉と思えるほど、土地柄や風土にしっくりしています。
picture ボーイスカウトでは、ロープを扱うことが多いのですが、ロープワークの基本中の基本ともいえる結びに「もやい結び」があります。人命救助においても使用する結びですが、元々は、船の帆の縁を船首側に引っ張るためや、まさに船を係留ために使用されてきた結びです。この結びでつくった輪は、荷重がかかっても結び目の部分が動かず、輪の大きさが変わりません。自然に解けにくいのですが、必要となれば割と簡単に解くことができるため、このような用途で使用されてきたわけです。
 「ばらばらになってしまった心のきずなをもう一度つなぎあわせる(=もやいなおし)」ために使われる結びは、「もやい結び」で、この結びは、一度結んだらそう簡単には解けない結び方なのです。
picture もうひとつ「結び」についてのお話。みなさんは、「叶結び(かのうむすび)」という結び方をご存知でしょうか?儀式用や守り袋、念珠などに使用され、縁起の良い、めでたい結びとされています。
 結びの表と裏で形がまったく異なり、表は、四つ目で口の字に見え、裏は、十の字の見えるので、「口」+「十」=「叶」となるため、こう呼ばれるのです。「よろず願いごとが叶う」とされ、組み紐をこの結びにして肌身離さず持ち歩く方もいるそうです。
 そんな「叶結び」ですが、日本だけで使われる結びではないのです。ボーイスカウト仲間によると、ボーイスカウトは皆首にネッカチーフを巻いて、通常はチーフリングでそれを留めているのですが、国際行事などで外国スカウトがチーフリングの代わりにこの結びを使用している姿がよくみられるとのことでした。表の口の字に見える結びが、手を取り合っている様子にもとれるからか、「友情結び」と呼ばれることもあるようです。
 「もやいなおし」は「結び」または「結ぶ行為」を由来とする水俣の方々の願いを体現する言葉と言えます。「叶結び」は、逆に「願い(願いを叶えて欲しいという思い)」を体現する「結び」と言えるかもしれません。
 「もやい結び」は、強固な結びで、自然には解けにくい結びなのですが、必要に応じて簡単に解くことができます。人と人の結びつきにおいても、強固な結びつきが場合によっては、悪い方向に物事を進めてしまうこともあるかもしれません。そんな時は一旦、思い切って結びを解くことも必要なのかもしれませんね。
 仏陀は、楽器の調弦の大切さを歌う歌声から中道の悟りを得ましたが、ロープワークも、目的に応じた、ちょうど良い結び具合が重要です。それは、人と人との結びつきにも当てはまるかもしれませんね。ただ現代においては、今にも解けそうなくらいの弱い結びつきが自分にはちょうど良い結びつきと感じている人が多いのかもしれません。 ちょうど良い「結び」を再発見または再構築することは、GNHの実践・向上にとって重要な要素と言えますね。GNHを実践するための結びは、何結びでしょうか?やっぱり「幸せ結び」ですかね。。。

文責 大橋昭浩

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