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逆らいしぐさ

2013年07月01日

逆らいしぐさ

 「タイって住みやすいよね、でも…」多くの人はこう思っているのではないでしょうか。「日本と較べて汚い」、「食事が脂っこい」、「サービスが無い」など確か否定したくなる気持ちは分かります。
 先日、友人夫婦の喧嘩の仲裁をする事がありました。奥さん曰く「夫はいつも私の言う事を否定する。一度だって【そうだね】って言ってくれない」、旦那曰く「そうじゃない。俺はいつも…」言っている傍からこれでした。もう会話が否定から入るのが口癖になってしまっているんでしょうね。
 場所は変わってとある南アジアの国では意見の言い合いは当たり前です。街中の至る所で口論のような交渉を見る事が出来ます。仕事も同様で、相手の意見を否定し、相手が話している途中でも割り込み、自分の意見を声を大にして主張し続けます。「お前の意見は全く持って検討はずれだ」面等向かってこのように言われたのも初めてのことでした。
 そんなぞんざいなお国柄ですが、彼らなりに2つのルールがあります。一つ目は決して手を出さない事、言い争いは許容されますが、殴ったりする事はタブーです。そして二つ目は年長者や階級の上の人の仲裁には従う事です。いくら自分の主張と違っても従います。
 江戸時代の日本、「しかし」「でも」と言う事を【逆らいしぐさ】と呼び、会話の中で使わない訓練をしたそうです。分別のある大人は、文句を並べ立てて逆らうことをしない、年長者からの配慮ある言葉に従う事が正しいと考えていたのです。
 確かに先述の友人宅ではありませんが、海外に出て生活をしているからこそより日本語の表現に敏感に反応してしまい、相手の些細な言葉使いに反応してしまいます。たまには自分の知らないうちについてしまった口癖を反省してみるのもいいかも知れませんね。
 会話は勝ち負けではありません。だからこそ、会話は否定から入るのではなく、まず「そうだね」、「そういう考え方もあるよね」と肯定から入る癖をつける方が良いかも知れません。まず相手の考え方を認めてあげる事が大事ではないかと思います。

文責 平山修一

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