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戸締め言葉

2013年01月28日

戸締め言葉

 話をしていて話しやすい人と話しにくい人って居ませんか?折角こちらが話をしたいことがあっても相手の反応で何も言えなくなってしまうこともあると思います。

 タイ人との会話の中で彼らがよく使う言葉に「クーワー」があります。これは「でもね…」と会話を繋げる言葉ですが、基本的に相手の言葉を遮ります。弱弱しくそっとこの言葉を言うので始めは気が付かなかったのですが、基本的には自分の意見を通すために使う言葉です。

 タイ人はよく観察すると自己主張の強い人が多いと思います。相手との合意を…というよりも自分の意見を通すために、様々な言い回しで否定から入ります。でも考えようによっては短気な人も多いので、相手を怒らせないように自己主張しないといけない厳しい社会、それがタイのような気がします。

 場所は変わって南アジアのとある国。ここは一般的に自己主張がタイよりも強いと思われています。確かに料金交渉ひとつとっても人々は怒鳴りあい、自分の主張は曲げません。うまく相手の言葉を使って自分の妥協点に導こうとします。

 そして一旦妥協すると今までの言い合いはなかったかの如く、笑顔で後腐れなしです。外国人のこちらとしては言い合いの興奮も冷めやらずむかむかしていたりしていますが、相手がケロッとしているので拍子抜けします。ここがタイとは少し違います。

 このように会話の中で否定から入り、相手が「何も言えなくなってしまう」言葉の事を江戸しぐさでは「戸締め言葉」といいます。「でも」、「しかし」、「だって」このように言われると会話も一気に覚めますよね。

 逆に「ふーん」「それで?」「なぜ?」と相槌を打つように聞かれるとこちらも話しやすくなります。こうした気配りを会話の中にも取り入れましょうというのが江戸商人の教養とされました。

 誰しもたまには気分よく話をしたいですよね。その為にはちょっとした気配りが会話のリズムを作ります。ぜひ戸締め言葉ではなく、相槌言葉のお試しを。

 

文責 平山修一

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