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お愛想目つき

2012年10月15日

お愛想目つき

 私が住んでいるタイの良さの一つに、穏やかな人の雰囲気があります。特に職場や観光施設、ホテルなど場所を問わず、人々の屈託無い笑顔と優しい目つきであふれています。
 とある南アジアの国に行ったときの事です。そこにいる人の顔の表情が皆険しく、なんとなく雰囲気が重苦しく感じたことがあります。実際、人は生きるのに必死で他人を押しのけて…これでは笑っている場合ではありません。
 今の日本の街中では笑顔の人をあまり見かけません。電車の中、デパート、公共施設、会社の中ですら精気を失った目つきの人や厳しい目つきの人が目に付きます。文化の違いもあるかとは思いますが、まるで笑顔を禁止しているようです。

 江戸時代の商人にはお愛想目つきという言葉があったそうです。言葉だけではなく目つきにも感謝を込めて応対をしなさい、それがお店のひいては世の中の雰囲気を作ります、というものです。
 江戸の人口の3分の2は男性だったそうです。昔の侍は単身赴任が多く、出身地も違えば風習や言葉も違う、確かにちょっとした事でトラブルになりやすく、ぎすぎすしがちだったのではないでしょうか。そうした侍達が作り出す雰囲気を少しでも緩和するために江戸商人たちは積極的に作り笑顔をしていたのでしょう。

 タイは街中でも会社でも多くの場所が笑顔であふれています。これらの多くは作り笑顔です。でも、作り笑顔とはいえ、目もしっかりと笑っているとなぜか心地よさを感じます。
 笑顔は雰囲気を明るくしてくれます。今日からでも積極的に心をこめて【作り笑顔】をしてみては如何でしょうか。また最初は作り笑顔でも段々と気持ちが晴れやかになり本当の笑顔になる事もあります。
 こうした一人ひとりの小さな試みによって、社会の何かが大きく変わる。これもささやかながらGNHの実践の一つのやり方かもしれませんね。

 

文責 平山 修一

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