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責任

 「空港整備 甘い需要予測」朝日新聞の11月22日朝刊の一面を飾った記事。甘い需要予測の元に開港、もしくは拡張した空港の内、需要予測に達したのは2割未満とのことである。当然ながらこの空港整備には多くの税金が投入されている。需要予測に満たないと言うことは、過剰設備である疑いもある。需要が盛り返さない限り、維持には更に税金が使われることであろう。防災の観点から必要な空港もあるが、必ずしも全てではない。

 長野県下條村は村の出生率が2.04、財政の健全化を実施。出生率が上がったことで町には活気が戻り、更には行政のコスト削減を成功させた。一つ一つの問題に取り組み、住民のニーズをしっかり汲み取って、各事業の費用対効果をキチンと考えた上で実施するべきか、計画変更をするべきかを判断してきた。結果として村の出生率が2.04を達成した。
 長野県根羽村は、今や国内で衰退してしまった林業が、今も成り立っている自治体である。下流の安城市と連携をして、山林を材木としてだけでなく、水源を守ることにも取り組んでいる。根羽村だけでは水源を守ることは到底出来なかっただろう。安城市の理解と協力(財政的な協力も含め)があってこそ、根羽村は林業を続けられる。安城市にしてみれば、自分たちの使う水に対して上流任せにせず、自分たちも責任を負った結果だと思う。
 これらの成功例は、多くの努力と共に幸運に恵まれた部分は否定できないと思う。しかし、その過程で関わっていた多くの人々に共通して言えることは“無責任ではない”ということではなかろうか。

 現在政府が進めている「事業の仕分け」、恐ろしいほど沢山の無駄が明るみに出ている。筆者自身、選挙へは欠かさず行くものの、自分が納めた税金がどの様にして使われているかについて関心を寄せたことは恥ずかしながら少なかったと思う。また、多くの方々も今は自分の納めた税金の使われ方に対して関心を寄せていると思う。
 有権者は自身が納めた税金の使われ方に納得できなければ、代議士は次の選挙で危うい。なるだけ中央から予算を獲得して“国家プロジェクト”と称して公共事業を興しても、空港整備事業の様にその後需要予測から大きく外れれば有権者は結果的にそっぽを向く。

 自分の納めた税金の使われ方について関心を今後も失ってはいけない。無関心ではいつの日か再び、働けども働けども幸せとは感じる事が出来ず、670兆円を超える借金を抱える国となってしまう。納得できる形で納めた税金が公共サービスなどで使われて、持続的で安定した社会を作るためにも、自身の税金の使われ方、政治には関心を持ち続けるべきだろう。

 

文責 瀬畑陽介

参考文献 朝日新聞11月22日朝刊
篠原 匡著『腹八分の資本主義』新潮新書、2009年
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