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自転車通勤

 通勤を急ぐサラリーマンや、通学路を集団で歩く学生達。日本の朝はとてもせわしない。どこの駅を見ても先を急ぐ人、人、人。溢れんばかりの駐輪場。悲しいかなこれが一般的な都心の朝の風景である。
 「駅より徒歩3分」未だに駅に近いイコール利便性が高いと判断をして住居を決める人は多い。通勤を少しでも楽にという理由が、優先順位の一番になるくらい日本の労働環境は悪いのであろう。
 コストとの折り合いで駅から離れた場所に住む人も多い。その人たちの味方になるのが自転車である。自転車は運動のひとつなので健康によく、また二酸化炭素の排出が運転する人の呼吸くらいなのでエコである。よって筆者は自転車に乗る人に好感を持っていた。
 しかし最近は自転車通勤のサラリーマンのマナーの悪さが社会問題化しつつある。一分一秒を争うかのごとく自転車を飛ばす人も居れば、歩行者と接触しても謝らず、そのまま行ってしまう人も居る。とても危ない。

 ちなみに自転車は、道路交通法上は車両(軽車両)とされ、自動車並に道路交通法の適用を受ける乗り物である。自転車の運転者は、歩行者と同様の感覚で歩道などを通行しがちだが、原則として車道を通行しなければならない。
 警察の統計資料によると、平成18年の自転車と通行人の接触事故は2767件、6名の死者が出ている。届出された事故だけでこの数字なので実数はもっと多い。またほとんどの自己例が高齢者絡みの為、通勤世代はこの数字を主体的には捕えないのかもしれない。
 ちなみに自転車事故で書類送検されるケースも増加しており、その賠償金も実際の裁判例を見ても700万円~数千万円と高額になる事が多い。せっかく住居費の節約の為に駅より遠くに住んでいても、些細な事で大きな損出を抱え込む事になるのである。この事実を知らずに自転車を飛ばし、ゲーム感覚で歩行者をよけている人がほとんどであろう。

 「危ないなあ・・・」今日も歩行者すれすれに猛スピードで追い越す自転車。私はぶつからないと考えているのかも知れないが、それは欺瞞で自転車は、歩行者にとっていつ後ろからぶつかって来るかも知れないという恐怖以外の何者でもない。
 自転車が悪い、歩行者が避けないからだという議論もあるが、この問題の根本的な課題は自転車専用道路が未整備だからではないであろうか。狭い国土というハンディもあるが、そもそも自転車と歩行者は分けなければ危険であるという発想がない事が問題なのではないか。
 とは言っても専用道路を整備するには巨額の公共投資と時間が必要である。非現実的な議論よりまずは自転車と歩行者の共生を図るべきであろう。それには自転車は軽車両であるという自覚を持ち、運転者は速度を落とす配慮が必要であろう。
 モラルの改善が裁量の策ではあるが、これが一番時間がかかるのが日本の現実である。

 

文責 平山修一

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