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IT化による憂鬱

 2007年4月27日エストニアにて大統領府のウェブサイト以下、政府機関、銀行、通信機関、メディアのコンピューターが使用不能になった。その方法とは通常1日1000件くらいのアクセスのところに1秒間に2000回ものアクセスを行い、コンピューターをダウンさせるもので、これの復旧には早くて3~4時間、長いと1週間もかかったらしい。
 これにより携帯電話、救急車派遣、飛行機等の運行管理、など社会インフラの多くの機能が麻痺し、一般市民の生活に大きな混乱を含めた影響を及ぼしたそうである。これはロシアがエストニアに対してサーバーテロを仕掛けたとの話もあるが、真相は定かではない。
 エストニアはあまり知られていないが、国の政策でIT化が最も進んだ国の一つだといわれている。今では世界何処でもIT化は良い事とされ、推進されているが、その政策に一石を投げるような出来事であった。

 筆者はSF小説の読みすぎか、このような社会混乱に現実的なテロ攻撃を加えると、国家が取り返しの付かないダメージを受けるなあ、と考えてしまう。日本も同様の視点で見ると随分と脆弱な基盤の上に成り立っているのである。
 そう、この脆弱な基盤という印象はパソコン自体にも当てはまる。特に毎日パソコンを持ち通勤している筆者は、「ここでカバンを落とすと全て今までのデータ、パーだなあ」といつも緊張している。またうちの気まぐれなパソコンによって「あれっ、電源入らない」と数ヶ月に一度は心臓の激しいトレーニングをさせていただいている。
 パソコンの中にあるデータはあくまでも微細な磁気の信号であり、これを読み取るのは電気で動く機械である。電気がなければパソコンはただの箱である。磁気布団の上でパソコンゲームを試みた筆者は痛い経験をしている。息子が悪戯している冷蔵庫のメモを貼り付けるマグネットにも過剰に反応してしまう。

 IT化は目覚しい勢いで社会を変えている。筆者はFAXを送るのに、穴あけパンチのような、今にして思えば007の暗号のようなものを使っていた世代である。今のようにパソコン一つで本が買え、自分の銀行資産が管理できる状態はどことなく落ち着かない。
 「紙でよこせ、原本で」職場の上司の声が今でも耳に残っている。そう筆者の仕事の基本は紙での決裁であった。稟議の回覧にされるサインを見て、本当に気分良くサインしてくれたのか、嫌々サインしたのかを探ったりしていた、これも昔の話なのであろうか。

 IT化は目覚しい勢いで社会を変えている。筆者はFAXを送るのに、穴あけパンチのような、今にして思えば007の暗号のようなものを使っていた世代である。今のようにパソコン一つで本が買え、自分の銀行資産が管理できる状態はどことなく落ち着かない。
 「紙でよこせ、原本で」職場の上司の声が今でも耳に残っている。そう筆者の仕事の基本は紙での決裁であった。稟議の回覧にされるサインを見て、本当に気分良くサインしてくれたのか、嫌々サインしたのかを探ったりしていた、これも昔の話なのであろうか。

 

文責 平山修一

参考文献;柳田邦男「新しい戦争の形 サイバーテロ」日本人の教養第44回、新潮45、2007年7月号より一部引用。

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