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進歩する冷凍技術

 先日見たテレビ番組で「冷凍技術の進歩」を扱っていた。一昔前の冷凍技術では、どうしても食品のおいしさを損なってしまっていたという。しかし、昨今の冷凍技術の進歩で、加工済みの食品を冷凍しても、おいしさは損なわれないという。私が子供の頃に食べた冷凍食品のピラフはおいしくなかった。友人宅でご馳走になったのだが,独特の癖があってご馳走になったのに申し訳ないが,とてもおいしいとは言えない代物であった。
 レンジでチンすれば簡単に食事が出来上がる。一昔前のCMで「玄関明けたら2分でご飯」を売りにしていたCMがあった。現代人の常日頃疲れている体にとてもありがたい代物である。また,一人分の食材をスーパーにて購入して,料理をしても材料が余ってしまって,かえって無駄が出てしまったりする。冷凍食品は生活の多様化や女性の社会進出に貢献していると思う。

 しかし、その一方で大きな弊害があると筆者は考える。ますます包丁を握って料理をする人は減るだろう。果たして日本の食文化は継承されるか。生活の多様化をより助長して家族の繋がりは薄くならないか。化石燃料が高騰している昨今、冷凍に費やすエネルギーの確保は資源節約に逆行しないか。
 問題を挙げればきりがないが,大量生産大量消費の生活から脱皮できなければ,いつかツケが回ってきてしまうと思う。そしてこのツケが「地球温暖化」という目に見える形にて現実のものとなりつつあるように思う。目に見えにくい「文化の継承」も現実となりつつあるように思う。

 テクノロジーは進歩する方向にしか進むことは出来ない。たとえ冷凍技術の進歩を一時的に止めたとしても,誰かが更に進んだ冷凍技術を開発するだろう。となるとテクノロジーを利用する側の人間が使い方を間違ってはならない。安易さに流され,価格の安さに流されてもっと大きな物を失いつつあるのではないかと危惧する。
 食事は単なるエネルギー源だけではない。食文化の衰退,家庭料理の衰退で最小の社会単位である家族の絆を弱くしてしまっていると思うのは考えすぎだろうか。

 

文責 瀬畑陽介

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