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ニッポン脱メタボ宣言 ~油抜きの社会へ~

 筆者は若い頃から腹が出ている。偉そうに言える事ではないのだが「太っていますね」と言われる事と、からかいのネタにされるくらいで日常生活に支障はなかった。ところがそんな筆者を取り巻く環境は年々厳しくなっている。
 「ウエスト周り85cm以上はメタボリック症候群予備軍ですよ」寝耳に水である。知らぬが仏と言うが筆者はいつの間にか、病気の予備軍とされていたのである。確かに内臓脂肪は目に見えるものではなし、気がつかなかったではすまないであろう。
 「痩せるには油抜きがいいですよ。食事に油物をなるべく控えるだけで随分と違います」最近では病院に行くと必ず親切にも食事に関して指導をしてもらえる。加齢と共に揚げ物を食べる機会は激変したが、やはり揚げ物は好きである。いきなり全てを辞めるのは無理があると思うが、控える事は少しの努力で出来るはずである。

 1バレル100ドル時代がやってくる。現在は少し前までは考えられないほどの急激な原油高騰である。この価格では資源大国が裕福になっていく状況は当分続くであろう。原油の大半を輸入に頼っている日本は今年に入ってガソリンを始め、多くの商品や料金が値上げされる事になってと聞く。
 いまや常識とされているが、原油高の高騰はほぼ全ての産業に大きな影響を与える。加えて脱原油の切り札とされているエタノール市場の活発化によって大豆やコーンの価格も高騰している。食糧を油に替える事が何を招くのか、素人でも考えれば分かりそうなものである。食べられない部分をエタノールにするのなら話は別だが。
 そこで筆者は提案する。いっそ日本社会も筆者同様に脱メタボを目指して「油抜き」をしては如何であろうか。いきなり「はい、明日から全部駄目ですよ」とは行かないから、徐々に油に依存しない社会を徐々に作り上げては如何であろうか。
 油が必要な産業は1に輸送、2に製造、3に発電と考えるが、これらの代替エネルギーへの移行、もしくは産業の縮小、生産設備の改善・改良が油依存の体質を変えるであろう。その体質改善こそが、原油価格の変動に一喜一憂しない社会の体質を作るのではないか。

 ダイエットと同様に食べる量や摂取カロリーを減らさないで、痩せようとするのは至難の業である。肉食から菜食への移行、夜8時以降の食事を控える、肉体を使った運動量を増やすなど、これらは社会構造に当てはめてみても同様のことが言えるのではないか。
 例を挙げると、地産地消の精神(地元の食材を食べよう)、水道水を飲む心がけ(嗜好飲料を控える)、国産品の積極的活用、旬の食材以外のものを求めない価値観、職住接近、公共交通機関の利用、手紙の電子メール化、郊外型店舗の出店規制などなど。こうする事によって自ずと輸送や移送の量は減り、原油の使用量は減るのではないか。
 この「自動車生活圏」の発想から「自転車生活圏」への回帰は、地域のコミュニティのあり方も変えるであろう。その為にはより通信インフラの整備が必要となるが、幸いな事に日本は既に森内閣以来、急速に通信インフラ整備を行なっており、その整備状況は世界有数である。

  国民に脱メタボを指導するのなら、原油高騰をきっかけとして、日本社会も本気で油抜き体質改善を図るべきではなかろうか。

 

文責 平山修一

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