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幸福と満足は相反する
先日、尊敬する京都大学名誉教授の新宮先生の論文を読み返していた。すると、先生のお考えでは「幸福と満足は相反する」との事であった。この考え方を自分なりに当てはめてみると面白いように自分を取り巻く多くの物事が見えてきた。
しかし、「貴方は今、幸せですか?」と聞かれたとすれば、間違いなくYesと答えるであろう。今の筆者の生活は日々充実し、発見の連続だからである。まだまだやりたい事が多く、時間が足りないと思える事は幸せ以外の何者でもないと思う。
しかし、今の供給が需要を創造する時代にはこの考え方には自ずと限界があるように思える。既に充足した消費者に対して危機感や不安感をあおり、新たなニーズを生み出し、その充足によって人々が安心という心の動きをえる。
この思考による心の動きこそが幸福を感じる元になるとしたら、それこそ無限に拡大し続けるものではないであろうか。しかし、思考にはジレンマやストレスは付き物である。これを乗り越えるだけの精神力が無いと思考による幸福感は得られないであろう。
GNH思想では、「幸福に至る為にいろいろ考える過程が重要で、結果を求めるものではない」と解いている。タイでも今年策定された国家経済開発の目標は「セータギット・ポーピアン(足るを知る経済)」である。物事を突き詰めないでその考える過程を大事にして、ほどほどの状態で満足しようじゃあないかという考え方である。
自分の欲をスケールの小さい段階に制御できる、これこそが幸福になる為の第一歩であると思う。そういう意味でも新宮先生の「節制は幸福の基礎である」という考え方は大きくうなずけるのである。
文責 平山修一 [参考文献] 新宮秀夫「節約は最大の資源・幸福」『資源・エネルギー』2006年3月より一部参考 |
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