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アメリカ産牛肉輸入再禁止

 1月21日,年末輸入再開をした米国産牛肉で問題となっている“危険部位”とされている箇所が混入していたニュースは,多くの方に衝撃を走らせたと思う。それまで何度となく調整を続けて,やっとこたどり着いた輸入再開。12月16日に輸入再開してわずか一ヶ月を少し過ぎたときだけに関係各所の方々,そして何よりも我々多くの国民の落胆は大きかったと思う。

 正確な時期は忘れてしまったが,昨年8月に私がブータンから帰国をした時期でも,まだまだ日本政府とアメリカ政府の「米国産牛肉輸入再開」の話し合いは平行線をたどっていたと思う。一般的にそれぞれが自分側の意見を相手にぶつけ合えば,話し合いは平行線をたどるのは当然であると思う。しかし,結果的に2005年末に向けて輸入再開へと動き始めたのは,日本政府側の歩み寄りがあったからだと筆者は思う。いつまでもぶつかり合っていては解決の糸口が見えてこない。
 同じ様な経験をブータン王国でもした。青年海外協力隊員の任期一年目を過ぎた頃,職場に対して「業務改善提案書」を提出したがなかなか受け入れてもらえなかった。それから何度となく打ち合わせをしたり,提案書の内容そのものを修正・変更したりして実現に向け動いたことを思い出す。結果,私の提出した「業務改善提案書」の内容を部分的に受け入れてくれた。受け入れまでには何度となく打ち合わせの時間を取ってくれたり,歩み寄りをしてくれたりと職場,同僚等の政府関係者に対して誠意,恩義を感じ,残りの任期は赴任一年目以上に配属先の為,そしてブータン王国の為にと協力隊活動をより一層頑張ったことを思い出す。

 先に紹介した「業務改善提案書」は,部分的には元の配属先で現在も継続して実施されている。実現へと至ったのは,私の一方的な内容の提案を押しつけるのではなく,“双方の意見調整を重ねた結果”であったからと思っている。実施に至っていない部分に関しても,お互いに各々が分担する部分を引き続き実現へ向けて動き続けている。少なくとも私が動き続けているのは,ブータン政府の恩に対して,仇で返さないようにと思うからである。
 1月21日に発生した「危険部位混入」は,私見ではあるがアメリカ政府の対応には誠意を感じることができない。“いつまでも輸入を許可しない日本”と我々を見ていたように感じてしまう。共に多くの時間を割いて協議を行った日本政府とアメリカ政府。お互いに相手の事を思い,問題解決に向けて誠実な対応を望みたい。

 一方的な押しつけではなく,双方が歩み寄りや協議を重ねた結果で出した結論は,調整に多くの時間を割くので効率的とは言えない。しかし,双方にとって歩み寄った結果なので,お互いに実施しやすい結果であると思う。日本のことわざに「急がば回れ」とある通り,時間をかけて調整を重ねる行為は,実はもっとも確実にして継続的な変化(発展)を行う上で,最善な方法ではないかと思う。

 

文責 瀬畑陽介

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