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肥満について思うこと(その4:肥満と環境)

 ダイエット成功の秘訣は今にして思うのだが、適度な運動であった。しかし多くのサラリーマン諸君はまず「時間」がない。一分でも多く休みたい、眠りたいというニーズのほうが先決であろう。
 次に「場所」、安全になおかつ周囲の好奇心の目にさらされない場所は早々見つかるものではない。会社の近くにスポーツクラブがあるとしても大きなスポーツバックを抱えての通勤は余計にストレスになると思う。
 このように現代社会の多くの要素は一般人にとってダイエットしにくい環境であるともいえる。ダイエットに成功するには時間に余裕があり、しかも安全で運動に適した場所へのアクセスが容易であることが求められる。つまり一部の層にしか手に入れられないものではないかとも言えよう。

 この運動できる環境は原始の社会では生活の場すべてであった。ただでさえ摂取カロリーが少なく、肉体を使った労働こそが生活の糧を得る手段であった時代には進んで運動をしなくても、生きていくためには運動をせざるを得ない状況であったと推測できる。
 しかし現代社会では生きていくためには運動をしない選択もありえる。それが治安ないし安全の問題に由来しているのである。盛り場、駅、電車の中など安全な行動範囲は年々狭められていることを感じるのは何も筆者だけではないと思う。
 例を挙げると子供の遊び場である。今ではスキップできない子供が多いという。蛙飛びもちゃんと着地できない子供も多い。それは遊び場の不足から来る身体を使った遊びの絶対量の不足が原因であろう。
 「知らない人は危ない人」と教えられた子供は知らない人は容易に入ることが出来る公園ですら遊べなくなりつつある。学校の校庭では先生の許可の無いときは遊んではいけない学校も多いと聞く。こんな環境ではストレスがたまった子供はどうなるのであろう。切れやすい子供や肥満の子供が出来て当然である。

 筆者が赴任した国々は年々運動できない環境にある。モンゴルは治安や交通マナーが悪いため、街中は危険である。郊外は犯罪の対象となる可能性が高いと聞く。誰もいない荒野では犯罪が行われても目撃者は皆無である。
 タイのバンコクは排気ガスが凄く息苦しい。痛いほどの太陽光に加え、汗をかくことへの伝統的な蔑視感が運動意欲を阻害している。ブータンでは多くの道路に歩道が無く、歩くことは運転マナーの悪い車によって非常に危険である。

 よってお金のある人はスポーツクラブに通い、運動しているのだが、お金の無い人はじっとしてTVを見て宇佐晴らしをするのが関の山である。このように環境(社会環境)は我々の体型までに影響を及ぼすのである。

 

文責 平山修一

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