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GNH平和構想

 日本時間5月5日未明、ニューヨークの国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の壇上で広島市の秋葉忠利、長崎市の伊藤一長両市長が、各国代表を前に核兵器の廃絶を訴えた。周知のことであるが1945年8月、広島で11万5000人、長崎で7万3000人の命が一瞬にして奪われた。これに至った経緯については様々な思惑もあるが、たった2発の原子爆弾が軍国主義に固執した世界の終わりと世界平和の幕を開ける最終兵器として世界中の人々の記憶に恐怖を植え付けた事は事実である。New York Times誌はこの事件を20世紀中最大のニュースとして発表した。

 広島・長崎の両市は、その悲惨な体験を後生に伝え再び同じ過ちが犯されることのないよう世界に訴え続けてきた。実際に長崎生まれの著者も幼少時代、市内の原爆資料館で黒こげになった被災者の写真に恐ろしい衝撃をうけた事を覚えている。

 戦争による悲惨な体験はもちろん日本だけのものではない。世界の多くの国が言葉に尽くせぬ経験を共有する。また現在エスカレートしている中国・韓国を中心とした反日運動は、我が国も歴史の中で加害者となり過ちを犯した時期があった事実を示すものである。この問題に対する日本政府の謝罪演説についても「評価はするが具体的な行動で示して欲しい。」と相手の対応は常に辛口である。国際政治の道具に用いられている感もあるが、いずれにしても日本に課された平和への課題は大きい。

 平和な世の中とは「戦争がなくて世が安穏である」ことだ。戦争が起きない「安泰な世」を持続していくためにも今、具体的な行動が必要だ。戦争の恐ろしさを訴え続けると同時に、それに至らないための具体的予防策の提案。各国間が各国の事情に沿った手段で真の幸福を追求し、互いに共栄共存し争いを生まない政策のモデル研究が求められるのではないか。このようなGNH研究の視点を今後の平和構想に十分応用し活用していけないものであろうか。これは日本が世界へ示していくべき積極的平和行動につながるものと考える。

 この世に存在する唯一の被爆都市、長崎・広島の両市は世界を代表して未来の「平和や幸福」について代弁できる権利を有した数少ない都市であると考える。核兵器廃絶を世界に唱えると同時に日本が過去に犯した過ちへの反省の意味も含め、世界に先駆け幸福な社会の提案と情報を提供していけるのではないか。その時、ようやく世界は沈黙を破った平和都市に静かに耳を傾ける。

 

文責 高田忠典

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