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行き過ぎた競争 ~鉄道事故を通して~

 先日発生した脱線事故。事故が解明されていくにつれ,徐々にどういった状況にて事故が発生したか見えつつある。一番の原因は“速度超過”と言われている。しかしそれだけが原因だろうか?報道されている限りでは
      「伊丹駅の停止位置をオーバーし,出発が遅れてしまい遅れを取り戻す為に…」
ではなぜ,制限速度を30キロ以上も超えて走ったのだろうか?

 京阪神間はJRの在来線と私鉄が並行して走っている区間が数多く存在する。

1.大阪~京都: JR京都線,阪急電鉄,京阪電鉄
2.大阪~神戸: JR神戸線,阪急電鉄,阪神電鉄
3.大阪~和歌山: JR阪和線,南海電鉄
4.大阪~宝塚: JR宝塚線,阪急電鉄

 関東圏のJRと私鉄の競合区間と状況は違い、関西圏では両社が同じ様な経路を通っているケースが多い。関西圏は、地形的に南は海,北には山が迫っている為,鉄道を敷ける場所が限られており,自ずと競合せずには鉄道路線を敷けないのである。路線が競合すれば到達時間,運賃,サービスの質にて乗客は使用路線を決めるであろう。

「見せかけの所要時間短縮の為,発車時刻の15秒前にドアを閉める。
時刻表上の出発時刻と同時に列車を走らせれば,1分の短縮が可能になる」

関西圏のJRと私鉄の競合区間のエピソードである。筆者には秒単位にて時間を削って所要時間を短縮し,競っているように聞こえる。

 競争を余儀なくされてしまう関西の鉄道。乗客の奪い合いは避けて通れない。他の路線よりも秒単位にて時間を削るようなダイヤは,現場(運転手,車掌)にとっては必要以上に定刻運転がプレッシャーとなるのではないだろうか?
 もしどこかで遅れが生じたら、遅れを取り戻す為にどこかで無理をしなくてはいけない。今回の事故は単に「運転手がスピードを出し過ぎた」という単純な理由の奥底には,定時運転へのプレッシャーがあったのではないであろうか?そしてその背景には乗客の奪い合いが避けて通れない関西圏の鉄道網の状況。乗客獲得の為の行き過ぎた競争が招いた事故ではないだろうか?

 突如として友人,家族を亡くされた方々,被害にあわれた方々を思うと胸が痛む。我々第三者ではとうてい計り知れない悲しみであると思う。二度とこの様な事故が起こることが無いように切に願う。

 

文責 瀬畑陽介

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