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健康とGNH

 健康であるという事は個人が幸福感を自覚するのに最も必要な条件の1つである。世界保険機構(WHO)は健康の定義を、「完全な肉体的、精神的及び社会福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と提示している。つまり健康は肉体のみの状態を計るものではないと言っているのである。

 健康を自覚する過程には、良い状態を保とうという本能もしくは意志が必ず関与している。「これをやれば健康であろう」という推測と納得のもと、食事、運動、睡眠等をとる。つまり健康な状態とは、意志と実行に基づく日常生活を経た結果なのである。

 そこで、生態的に完全な状態を100%とした時、はたして何パーセント以上を満たしていたら「健康」であるといえるのだろうか。また何を基準に自己採点するのか。これについての定義は人の感覚や主観に大きく左右されるため確定が困難である。

 この定量化がしにくい状態は、我々が自分の「幸福」の指数を考えたときにも同じ事が言えるのではないかと考える。生活に不安を感じさせない環境の有無は「幸福感」を計る1つの条件にすぎない。そしてそこには必ず精神的要因がからんでいるはずである。「幸福」を意識し、推測と納得のもと個人が属する環境にあった無理のない生活行為を心がける。そして実践を通し徐々に個人の中に「幸福感」が芽生えてくるのではないだろうか。

 一般に「健康」はその状態ではない人々、または、それを失う恐れをしている人々のための言葉なのかもしれない。「幸福」に対する追求。このGNH研究も「幸福」の中にある人々には意識されにくいものなのか。

 

文責 高田忠典

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