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「清潔感」

 途上国で仕事をしていると、ふと疑問に思うことがある。それはこの人達は何を清潔と考え、何を不潔だと考えているのだろうかと言う事である。

 子供じみた話で恐縮だが、筆者は以前ブータンの片田舎で犬の糞を踏んだことがある。草むらを歩いているときうっかり踏んでしまったのだがそのときのブータン人の反応が面白い。
 先ず、「お前の踏んだのは犬の糞か人の糞か?」と聞かれる。それが犬のものだったら「良かったなあ」といわれ、人のものだと大の大人でも「汚い!」と露骨に嫌な顔をするのである。「どこで見分けるの?」と聞くと、「人間のものは必ず消化されずにそのまま出てきた唐辛子が入っているはず」との答え。思わず納得してしまった。

 例えばトイレの使い方一つをとっても考えさせられる事が多い。筆者が学校の保健室の設計をしている時の事である。病気の生徒を休ませる通称「 Sick room 」のトイレはインド式の和便器タイプが良いのか、西洋式の洋便器タイプが良いのか悩んだことがある。
 日本人でも同じかもしれないが、和便器では直接お尻を接する事無く、用が足せる。つまり清潔に用が足せる。しかし、ブータンの便器は用をした後に自分で水ためにある水を柄杓上のものですくって流すのである。この方式だと慣れないとズボンのすそがびしょびしょになってしまう。しかも大事なところを洗ったあとは乾く前に皆パンツをはいて平然としているのである。
 日本の病院などは老人や手術後など体力が低下している人達のために洋式を採用する病院が多いと聞くが、ブータンではうんちによる感染が心配されるため洋式は嫌われる。「他人のぬくもりが残っているなんて考えるだけでもぞーっとする」これも洋式を嫌う理由の一つである。

 日本では清潔病に罹ったんじゃないのと思われるような行為や商品が目立つ。人間力がますます低下しつつある日本。ブータン人の清潔感はそれなりに悪く無いと思う今日この頃である。

 

文責 平山修一

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