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三脱の教え

2013年04月01日

三脱の教え

 初対面の人と話すときに何を話してよいのか迷った経験はありませんか。最近では人に紹介されることも少なく、自己紹介をする機会もあまり無いので、見知らぬ人との会話の取っ掛かりを探すのが難しいことがしばしばあります。

 ブータンは時間をかけて人物の様子見をする文化です。日本人は第一印象等ですぐに相手を信用します。しかしブータン人は第一印象で人を悪く判断はしますが、信用はしません。じわじわじっくり相手を見聞して心を徐々に開いていきます。

 またブータンでは初対面の人との会話に必ず聞くことがあります。「結婚はしているのか、子供はいるのか、どこから来たのか、どこで働いているのか…」と根掘り葉掘り聞かれます、何故でしょう。

 これは相手の立場や地位を知った上でないと話ができないという文化があるためです。しかし初めてこの洗礼を受けた人はたいていびっくりします。また独身だと言おうものなら「何故結婚しないんだ」などと余計なことまで聞かれたりします。これはやりすぎかもしれませんが・・・。  時代は変わって江戸時代。江戸の商人の間ではお客さんとの会話をするコツとして「三脱の教え」を番頭さん以下奉公人に周知したそうです。それは初対面の人には年齢・職業・地位を聞かないという会話の礼儀の事です。

 基本的に【今日はいい天気ですね】から始まり、地域の四方山話、お客さんの身に着けているものを褒めたり、その見立てを褒めたりすることから会話を広げる工夫をしました。今風にいうとセールストークを練習したんですね。このようなたわいない会話を続けることでお客さんの情報を得る努力をしたのでしょうね。

 日本人はいつの間にか無駄な会話をするのが苦手になった気がします。特に雑談が出来ない人が多いのではないでしょうか。何気ない会話から相手の人物を判断できる会話力、身につけたいところですね。

文責 平山修一

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