<< 一つ前のコラムへ 次のコラムへ >>

「GNH」日本へ伝来

 6世紀「仏教」は大陸から伝来し日本の律令体制を確立した。16世紀にヨーロッパから伝来した「鉄砲」は日本の合戦に一大革命を巻き起こした。そして2005年、ヒマラヤの小国から1つのフィロソフィーが伝来する。日本の未来にどれだけの影響を与えていくのか。

 東京で外務省の企画によるGNHカンファレンスの開催が決定した。「アメリカに追いつけ」のスローガンで一丸となって経済的豊かさを追い求めてきた日本人には「仏教」や「鉄砲」と同じく目新しく写るに違いない。

 カンファレンス開催の背景には政府の国連常任理事国入りへの画策が見え隠れする。ブータンは今回の日本の意向に真っ先に手を挙げており貴重な賛同国をないがしろにはできない。それと同時に日本が対アメリカだけではなく世界に対しリーダーシップを取れる題材がこのGNHにはふんだんに含まれていると考えられる。現在開催中の愛知万博は予想以上の来場人数を記録しており世界が掲げる環境への日本の取り組みを十分にアピールしている。GNHのスローガンを導入する事で京都議定書を始めとするこの取り組みへの更なる強力なアプローチに繋がっていく事も十分期待される。また終戦60周年を迎える日本の平和構想にこのアイデアを用いれば世界初の試みともなろう。さらにGNHによる開発の考え方は分業が求められる地方行政への起爆剤とも成り得る。

 今回の日本における初のカンファレンスの中身においてはGNHという新しい分野の紹介に終わるではあろうが、これを機にブータンという神秘の世界だけが注目されるのではなく、経済・教育・環境・宗教、その他すべての分野における第一線の研究者達が「GNH」という新しい素材に目を向け、新しい日本の未来を画策してくれる事を期待する次第である。

 「GNHの日本伝来」が未来の歴史教科書の一行に刻まれるその日を夢見る。

 

文責 高田忠典

<< 一つ前のコラムへ 次のコラムへ >>