GNHとは? 高田忠典

 大学を卒業後、何の疑問を抱くこともなく一般企業へと就職した。そこで待っていたのは競争社会。とにかく働く。資本主義の社会であるから当然であろう。朝9時から、夜遅くまで。働けば働くだけ収入は伸びた。しかし、一旦休日ともなると貴重な休日を謳歌しようと、休日は休日で必死になって遊んでいた。つまり、一時たりとも心の安まる時はなかった。。。。そんな日本社会を抜け出したい思いが強く、僕は青年海外協力隊に参加した。

 派遣された国で待っていたものは、のんびりしたペースを尊重する社会。日本では常に(自ら)忙しくしていたので、仕事がどんどん続いていないと不安になってしまう。しかし、派遣先の同僚の顔には,仕事が続かなくても焦る様子はなく、むしろ悠々としている。何故なんだろう?

 町中でもそうだ。全てがのんびりとしている。決して裕福でないにも関わらず町をゆく人々の表情は明るい。そして、町全体の空気もどこかのんびりしている。そんなこの地で暮らしていく中で,自然と何か私自身も心地よいものを感じ始めた。気持ちにゆとりを感じた。

 15 分離れた職場への自転車出勤、肌に感じる風、差す日差し、目の前に見える景色に目を奪われてふと自転車を止めてみたり。今は日本で働いている時には感じることの出来なかったものを日々感じながら暮らしている。今まで感じることの無かったものを感じながら暮らしている。にも関わらず、ここブータンでは大量の仕事もこなしている。果たして何がいったい違うのか?

 青年海外協力隊員として活動しているここブータン王国。ここでは「国民総生産 (GNP) の向上よりも,国民総幸福量 (GNH) の向上を目指す」 と国を挙げて目標を掲げている。具体的にどういったものが国民総幸福量の向上に貢献しているのかは定かではない。しかし,日本から来た我々でも,日本では感じることの出来なかったものを感じ,日々心地よくこの地で暮らしている。そこには何か理由があるに違いない。

 恐らく,国を挙げて目標に掲げている GNH 向上の一端を感じ,恩恵に授かっているのだと思う。今の段階では GNH は主観でしかない。これを別な言葉,手段でもって説明出来るようになった時,ブータンに限らず世界の多くの国が,心地よく暮らすことの出来る国になるであろう。そして,より明らかになるであろう。心地よく暮らすにはどんな国造りをすればよいか。

 

文責 瀬畑陽介